1万8000字インタビューに続き、
今作『新未来』に、近いとこから関わった
坪光成樹氏によるライナーノーツを
公開します。
なお、
・1万8000字インタビュー
・坪光成樹セミセルフライナーノーツ
・20人が聞いた、『新未来』(レビュー集)
をまとめた自家印刷特別発行【新未来通信】を、限定数にて本日より配布します。
是非お手にとってね
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どうも、坪光です。はじめまして。お久しぶりです。いつもありがとうございます。今回のアルバム制作には、付かず離れず何かと関わらせていただいたため、僭越ながらセミセルフライナーノーツ的な何かを書いてみますね。
思えば、2016年11月中旬、もうそろそろさすがにドラム録らないとまずいでしょうというタイミングで、今作収録の10曲中3曲くらいはまったくできていなかった。まぁびぃなんて全然わけわかんないで録音したと思うけど、結果、うまいことまとまった。これが完全無所属/完全自主レーベルの機動力。吉村かおりはとても周りに気をつかうから、全部自分でやるのは、それはもうたくさん苦労もあったでしょう。でも結局、自分が思ったことを自分が思った通りにやれないと気が済まない人なので、このアルバム、そんな音がしてるんじゃないかなあと。
さて、音楽の内容面でいうと、今回の吉村かおりは、もうすごく懐メロです。90年代中盤〜後半に僕らが単純にかっこいいと思ってときめいた時代のエッセンスを、ちゃんと落とし込もうと思って意図的につくった。アレンジもそうだけど、精神性というか。今よりもっとローファイで、下手で、勢いだけで、なんか汚い、そんな音がちゃんとヒットチャートにのぼってきていた時代。そんな頃に多感期だった僕らが2017年に提示できるものは何なのかを考えました。当時はたぶん、今よりも業界が金を使えた時代だったからか、すこしわかりにくいものとか、聴き手に想像力が必要な音が、ちゃんとヒットチャートにのぼっていた印象がある。それが時代のムードだったんでしょう。それは今は違うから。でもこれからはそんな未来であったらいいなと、微かな希望を持っています。
そして、吉村のメロディーセンス、言葉選び、ピアノのフレージングの秀逸さ。言わずもがな素晴らしい。「だれかがやってるようなことは吉村でやる必要ないじゃん」ってよく本人が言ってました。セオリー通りに凝り固まった僕のような頭ではおよそ考えつかない、でもそれは吉村にとってすごく自然体な表現。とってもパーソナルなのに、聴き手の想像力によって、とっても普遍性を持って聴こえたり。一聴すると冷たいんだけどよく聴いてみるとじつは愛が深い、みたいな。やっぱすげーひねくれてんなーと思います。
あまりうまくまとまらないけれど、2017年1月現在の吉村かおりの魅力が全部詰まったアルバムにできたと思うんで、皆さん是非じっくり聴いてくださいね。曲数の割に時間けっこう短いから。1回目は何も見ないで、2回目はスタッフクレジットを見ながら、3回目以降は歌詞を見ながらがおすすめです。
以下、アレンジとかに関する個人的な聴きどころを。
M1.夜のはじまり
・まぁびぃのパーカッションアレンジに対する頭の柔らかさ。
・ムチの音(じつはりしさんがどっかで見つけてきたサンプル)。
M2.熱帯夜
・井出匡のシューゲ感と謎に最後だけアコギなとこ。
・横山渉のフレーズから想像できる手のでかさ。
M3.待ち合わせ(ガール)
・リテイクにリテイクを重ねたエレキギターのアレンジ。
・ブラシでスネアを強打するといい感じのトラック感が出る。
M4.白い岸
・まぁびぃっぽくないハードロック風なフィル。
・ここぞのオクターバー。
M5.無題
・いつかのフェスで見たACOさんのエレキギター弾語りをオマージュ。
・ギターソロのだささ。
M6.あれに見えるは桜でしょう
・花とポップスのお二人のあざといまでのポップネス。
・アウトロでメロ追いのシンセが泣ける。
M7.暮らし
・わざと下手に聞こえるようにとバチバチにミュートして録音したドラム。
・ギターはどのフレーズをどっちが弾いてるでしょうか。
M8.balloon
・朝本浩文氏リスペクト。ちょうどこの制作が終わったときに訃報に接した。合掌。
・間奏で出てきたストリングスのサンプルがアウトロで伏線回収できたこと。
M9.袋小路
・サムはほんとに一筋縄でいかないな。
・フレージング全部勉強になります。
M10.楽園は、されど
・右のほうで薄く鳴っているトレモロのギターフレーズが一番サビ後に半音上がって辻褄が合うこと。
・アウトロの最後でマイナー進行になる吉村印なコードワーク。
[2回]
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2017/01/12
吉村うたいて情報含む