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2024/04/25

1万8000字インタビュー ~『新未来』リリース記念~

2万字でも1万5千字でもない、

1万8000字で
思ってたこと、ちょっと話したかったこと

本日リリースとなるニューアルバム
『新未来』についてを、
インタビュー形式でお話しました!

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

――― 『丸の内』や『ふくろのそこ』、『Re:do yeah』といったミニアルバムのリリースはありましたが、フルアルバムは2010年の『ハツ』、2012年の『ピコノート』を経て、久々のリリースとなりました。

[吉村]そうですね。でも、フルアルバムっていうか……4曲だとシングル?6曲だとミニアルバム??って悩むし、面倒くさくなるから、最近はあんまりアルバムの区別を付けてなくて「なん枚目のCD!」って言ってる。だから『新未来』は5th CD!5枚目です。

――― そもそも『ピコノート』のあとに曲数の少ないCDが続いたのは何故?

『ピコノート』を作った後に、もうフルアルバムは面倒だしいいや!そもそも、なんでアルバムに10曲とか入れなきゃいけないの?って思ったから(笑)。曲ができたら、そのつどCD作ればいいや!って。

――― そして『Re:do yeah』では初のピアノレスCDいうことで。

まず、坪光さん(坪光成樹氏/夫・通称つぼ)のギターで、既存曲を中心にリアレンジしようっていうのがあって。あとはピアノがコンプレックスだから、それを解放してピアノを気にせずに、ピアノに縛られずに作ろう、と思った。歌も前より好きになったから、そっちに特化したCDがあってもいいかなって。裏の理由として、私が坪光さんをライブに呼ばなくなったときに、本人はまた一緒にやりたいって言ってて。でも、しばらくライブはひとりでやりたいって気持ちがあったから「このCDで起用するから、これでいい子にしててね!」っていうのもある(笑)。

――― お菓子的な(笑)。これまではむしろ、ソロでの弾き語りがレアな時期も長かったと思うのですが、ひとりでやりたいと思うようになったきっかけは?

ピアノがずっとコンプレックスだったけど、歌のために弾くぐらいでいっか!って思うようになった。これまでは、鳴らさなきゃ!と思ってる音をピアノで表現しようとすると、どうしてもリズムの縦のラインを合わせようって気持ちが強かったからバンドの方が良かったんだけど。ひとりだと、ひとりでのテンポ感も楽しめるから、もっと気まぐれに、はみ出した感じでやっていいのかなって思い始めて……弾き語りの、ひとりの面白さを知ったのが大きいかな。

――― 前よりも歌が好きになった、というのも大きなきっかけに?

そうだね。前よりは声の出し方を知った。前よりは、ですけどね。いろんな人から「歌だけは上手くなれ」って、ずっとプレッシャーをかけられていて、初めてちょっと習いに行ったの。これまでは、頭の中で作った曲が自分の声域に合わなかったりしたんだけど……例えば『熱帯夜』は、前の私の歌い方だとほとんど裏声になっちゃったと思う。でも、人に教えてもらったら、今まで知らなかった歌い方ができるようになった。歌は、できることがちょっとずつ増えてきて面白くなったかな。

――― ライブでも感じていましたが、ここ1年ぐらいで本当に歌が変わりましたよね。今回も1曲目の『夜のはじまり』を聴いたときに「かおりぃ、ここはいっつも裏声の音域だったじゃん!地声でも歌えるんじゃん!」ってビックリしました。地声から裏声に変えていく部分が持ち味っていう見方もあるけど、地声で乗り切る吉村かおりが新鮮でワクワクしました。

それはねー……歌について色んな人に言われてた中で「裏声で急に音圧が下がるからもったいない」って君の旦那(ムラタトモヒロ氏)に言われたのがあって(笑)。隣でPAのりしくん(中村久志氏)も無言で頷いてて。

――― そうして色んな人にプレッシャーをかけられたことによって、歌がひとつ抜けたのはすごく大きいですね。

ちょっとずつですけどね。そう思ってもらえていたら嬉しいけど。

――― あとは歌詞が、より一層どうでもよくなりましたね。もちろん良い意味で!!

あはは、無責任な?(笑)

――― もともと吉村かおりの作品で「この気持ちが伝わらないと嫌!」みたいなエゴはほとんど感じなかったけど、前作『ふくろのそこ』の『ヘイミスター』あたりから「分かんなけりゃ分かんないでいいし、あとはそっちで解釈してね!」っていう、聴く人に与える余白の広さがさらに増したように感じます。

人に通じなくてもいいや、ってね。前から、歌詞は1番なんにも気にせず書いてるけど、確かに責任は持たなくなってきたよね。だって、そういうのは他の人がもうたくさん書いてるし。展開とか、最後が読めちゃうような歌詞は、ライブで3回ぐらいやったら飽きてやりたくなくなるだろうし。

――― 歌詞に余白を持たせているのが吉村かおりの持ち味だ、と。

それいいね!使おう!!!(笑)

――― 『ピコノート』のインタビューのときにも似たようなことは話してますけどね!(笑)そして、相変わらず突然ドキッとするフレーズは入れ込んでくるという。

ドッキリするポイントは、いろんな人に聞いてみたい。自分が思ってる部分と違う場所を言われたりしそう。

――― 人によって違うフレーズだったりするかもね。急にサスペンス入ったりしますし。

うん、急にサスペンス入るよね(笑)。好きなんでしょうね、ブラックユーモアとかが。ちょっと前に、たまたまテレビで観た劇団のお芝居がブラックユーモアで、ああいうのが好き。小説でも、幸せな家族の話だと思ったら実は仮面家族だった!みたいな、入口は楽しいのに、あとから「こわっ!」ってなるやつが好きで。星新一とか阿刀田高の作品とかね。そういう好きなものが無意識に出てるのかも。ドキッとさせる感じ。

――― そのドキッとさせる感じに、吉村かおりの“いじわるさ”がありますよね。聴き手に余白を与えている割に、毒というか、ちょっとした悪意を入れ込んでくるところが。

うっかりしてたくないんですよ。ずっと幸せでいたくないというか、ずっとお花畑にいたい気持ちは分かるけど、それだけじゃないよ?っていう。

――― そんなに人生は甘くないですよ?と……やはり30代半ばにもなるとね!

そうそう。例えばの話だけど「同じこの時間にお腹をすかせた子どもが死んだ」っていう事実が絶対にあって、それは知っておかなきゃいけないことだ、みたいな。ずっとお花畑にいたいっていうのも分かるけどね。


――― さて、今回は参加ミュージシャンの数が多いとのことで、最多だとか?

……って発表したけど、数えたら史上最多じゃなかった。同率最多かな?バンドメンバーは、つぼが仲良しで、一緒にやりやすい人っていう選び方になってるかも。あと、実はこれまで、そもそもベースって必要なの?って思ってたぐらいベースに興味がなくて。でも、坪光さんのベーシストとしてのタイプがやっと分かってきた。『新未来』に参加してくれた渉君(横山渉氏)は、最初はむらっち(村岡俊介氏)と似たタイプかな?って思ってたけど、演奏を聴いてるうちに意外と歌うベーシストなんだなって気付いた。そう考えると、最初にむらっちみたいな玄人肌のベーシストを選んだ私も凄いなってことにも気付いたし(笑)。むらっちとは今でも近所で呑んだりするし、また一緒にやりたいと思ってます。

――― 坪光さんのベーシストとしてのタイプが分かったことで、他のベーシストに対する印象も変わってきた、と。

渉君は、正確なだけじゃなくて、ベースラインでとても歌ってくれる人だよね。まぁびぃともつぼとも仲が良いし、それこそ呑み仲間でもあって、私の音楽に対しても好意的に思ってくれているから参加してもらって。

――― 気持ちの部分も大事ですよね。

うん。好意的に思ってくれてる人には頼みやすいし(笑)。あと、坪光さんならこうするだろうな、っていうのが分かってきたから、そうじゃない解釈とか違う世界が欲しいって思ったときに、渉君とかギターの匡君(井出匡氏)にお願いしよう、って考えるようになった。

――― ちなみに、匡君とはどんな出会いを?

湯野川広美BANDとか斉藤麻里サポートを経て、坪光さんと親交を深めたのがご縁で。匡君のギターのセンスがめっちゃ好きで、去年の2月に“吉村かおり、テトラ法則”で初めてバンドに参加してもらいました。見た目がとてもフレンドリーというか、私からしたらちゃらついて見える人なんだけど、とても真面目で熱くて、根が優しい人なんだよね。そして、結構マニアックな音が好きな人。本当に音楽が好きな人なんだと思う。あと、今回のアルバムには同じくALLaNHiLLZ の双子のお兄ちゃん・匠君からもコメントを頂きました。双子揃ってなんだか吉村かおりを好いて下さってるんだけど、音楽ジャンルが違う人に好いてもらえるのは、なおさら面白いし有難い。

――― バンドメンバーの他には、ガットギターの敢君(友宗敢氏)も加わりました。敢君とは、昨年の秋に、さわひろ子や平井ミエとのツアーで一緒に回ったのがきっかけかな?さわひろ子のサポートとして。

そう!敢君とは、挑戦って意味で面白いかな?と思ったの。敢君にお願いする曲は、未発表曲の候補が2つあったんだけど、バラードで最近たまにライブでもやる曲のほうを選んでみました。

――― 色んなご縁があったり、面白そうだという想いから、自然と関わる人数が増えた、と。

これまでは「自分の頭でこういう風に鳴ってるから、こう叩いて下さい!こう弾いて下さい!」って、自分の頭の中を表現したいっていう気持ちが大きかったけど、今回は「作曲と作詞はしたけど、なんとなくこんなイメージです!アレンジの参考にするならこの曲です!あとはお願いします!!」という感じで、歌詞の話にもあったけど、すごく無責任かもしれない。

――― でも、そこに至るまでの人選にはすごく責任を持っている。

そう!!!人選だけは得意なんですよー、私。ブッキングと人選は間違いない。

――― その結果、『新未来』は、ものすごく90年代を感じるJ-POPに仕上がりましたよね。特に、渋谷系というジャンルが生まれた時代。参加ミュージシャンがほとんど同世代というのもあるのかもしれませんが。

そうなの!『新未来』って言ってる割に90年代だよね!!幅広さもそうだと思う。あの頃に出てたCDも、これぐらいの幅広さがあったよね。んー……90年代っぽいから『新未来』じゃないのかな?って思ったけど、でもやっぱりあの時代じゃないんだよね。

――― もちろん、90年代そのままではないよね。あの時代のテイストを今の吉村かおりとメンバー達のフィルターにかけた結果のJ-POP、現代のポップスに仕上がっていると思います。
さて、人選についての話も出ましたが、今回はアレンジャーも入りました。坪光さんの他に、花とポップスからつるうちはなさんとサトウトモミさんのお二方も。

『あれに見えるは桜でしょう』に関しては、サビのフレーズが浮かんだときにもう四つ打ちの打ち込みサウンドだと思ったので「これはもう、つるうちはなだ!」ってなって。そこから先は、はなちゃんにアレンジしてもらうつもりで書きました。

――― アレンジャーに向けての当て書きだったんだ!かおりぃでは相当珍しいというか、初めての書き方じゃない?

初めてだった。一から誰かにアレンジをお願いするっていうのもなかったし。でも、つるうちはなの代表曲とかに使われてるエレクトロな音が大好きだから、お願いしたかったんだよね。サトウトモミさんとは実はお会いしたことがないんだけど、はなちゃんが「もちろん私もやるけど、サトウトモミの感性をプラスしたらもっと面白くなるんじゃないかな?」って提案してくれて。

――― お願いしたい!と思ってた人からそう言われたら、ね。

「はい~!もうそれでお願いします~!!!」って。実際、アレンジされて返ってきたものもドンピシャで、はなちゃんとトモミさんに頼んで絶対良かったと思ってます。

――― これまではある種、楽器隊を自分の頭で鳴っている音を表現するためのツールとして位置付けていましたが、そこから考えが離れたことには何かきっかけはあるのでしょうか?

良く言えば、自分の頭の外まで行きたいと思ったし、悪く言えば、頭の中でそこまで具体的な音が鳴らなくなった、というか。でも、私はそれを枯れたとは思ってなくて。たぶん弾き語りしか知らなかったときに「ここでエレキギターがギュイーンッって入ってくるんだよなー!」って思っていた曲でも、吉村かおりの曲でギターを入れた完成形は、既にもうライブや最近の音源で知ってしまった、っていうのが大きいかな。知ってしまったし分かったから、そうじゃないんだよなって曲に関して「どんな音が鳴ってるかな?どうしようかな?でも、トリオとかギター入れただけじゃないんだよなぁ……」って考えるようになって。例えば『待ち合わせ(ガール)』とかもそう。

――― もう、ソロだけでも3ピースだけでも表現しきれないのよ!と。

そう!ギター入れて4ピースだけでもないのよ!と。だから、ライブで演奏できる形のアレンジだけじゃなくなってきてるね。

――― 思えば今回は、ライブで演奏している曲が溜まってきたからアルバムを出します!っていう流れでもなかったね。

うん。未発表曲が多いアルバムも初めてだね。10曲中4曲はライブで全くやったことないし。そもそも『新未来』には弾き語りありきの曲が極端に少ないから、後からライブ用にアレンジしていく曲が多いと思う。


――― さて、レコーディングに関してもお伺いします。かなりDIY化が進んでいるようで、クレジットの「甕壷音工房」の文字もお馴染みになってきました。今回は歌も自分で録音したとか?

『Re:do yeah』から歌は自分で録ってて、ミックスとかマスタリングをやってくれてるりし君がかなり我慢して調整してくれてると思う(笑)。経費の問題もなくはないけど、自分で好きな時間にやったほうが1番融通が利くからね。スタジオの時間を決めて、エンジニアさんとその時間内にカチッと録る方法もあるけど、ひとりなら隙間の時間で録れるし、ある程度の納得がいくまで家でのびのびとやりたいかなって。

――― リリース日は決まっていたから、一応の締め切りはあったんだよね?リリースを決めずに録り始めると、いつまでも仕上がらないっていう話をよく聞きますが。

よく聞くよね!本当はそれで1回やってみたかったんだけどね。実は春くらいから、録るだけ録っていこうかなって思ってたんだけど、いつの間にか11月になってた(笑)。

――― 春先に録ってたら、11月には録り直したいって思ってたかもよ?(笑)

そうだろうねー!!!だから「はい!ここまでで終わり!もう締め切りです!」っていう方が合ってるかもしれない。絶対に直したくなると思うから。歌録りだけは別だけど。

――― そして、レコーディングのDIYっぷりはもちろん、アートディレクションもご自身で。

『ピコノート』以外は全部、自分でやってますかね。

――― 今回のジャケットデザインについて教えてください。

これもまた歌詞と同じで伝わんなくてもいいや、なんだけどね。旅行に行ったときにホテルの頭上から撮った香港の町並みの写真が背景になってるの。どぎつい鮮やかな部分もあるけど、掠れてるというか、くすんだ感じもあるっていう、香港の雑多な街並みが好きで。たまたま自分のiPhoneで撮っただけの写真(笑)。

――― iPhoneの写真がCDのジャケ写になるとは!

ねー!すごい時代!ジャケットは、博物館とか美術展のポスターみたいな、黒地に白抜き文字っていうデザインにしたくて、パッと見たとき模様に見えるようなぼやけた感じの写真で良かったから、ちょうど良かった。

――― あとは、新未来の“来”の文字が、眼の形になっていたりして。『新未来』には、「覗くは自由、除くも自由。」という隠れキャッチコピーがありますが、そこから来たのかな?

あんまり考えてなかったかも。最初にこのデザインで作ったフライヤーの“来”の文字は、右の部分はただの真ん丸だけだったんだよね。その後で左の部分を三角形にしてみたら瞼っぽくなったから、次に作った盤面やジャケットではもっと眼っぽくしてみよう!ってなったの。私の中での『新未来』……未来の世界って、手塚治虫とか藤子不二雄の世界なんだけど、なんとなく目玉にしてみたら、ちょっと藤子不二雄っぽくて良くない?って思った。あと、あえて言うならジャケと盤面で微妙に違ったりするので、気づいてくれたら嬉しいなあ(笑)。

――― 『ハツ』や『ピコノート』でも動物の顔や目玉がジャケットに登場していたので、そこに合わせたのかと思っていました。

あ、本当だ。全然意識してなかった!っていうか、目玉って気持ち悪いじゃん!!なんか潰れやすそうで嫌だし!(笑)目玉ってそういう不思議な存在だけど、ものを見て情報を得るっていう機能があるわけで。視覚をとらえるっていうのは、どの生き物もすることだから……うーん、気持ち悪さが引っかかって使っちゃうのかもね。

――― その気持ち悪さも人をドキッとさせるポイントだし、歌詞にも通ずる吉村かおりの“いじわるさ”が表れている気がします。あと、デザインからは外れてしまいますが、個人的には、クレジットのRelaxationの欄がたまりません。

クレジットはつぼが考えたんだけど、うちで買ってる3匹の亀たちを、HIPHOP調というか、DJさんっぽくネーミングしてます(笑)。



――― さて、ここからは収録曲について伺っていこうと思います。『新未来』には新曲が多いということもあって、これまでの吉村かおりというよりは、これからの吉村かおりを表す作品と感じていますが。

うーん……

――― 『新未来』って、別に自分のことじゃないのよ?と。

うん、まぁ……そうね、自分のことだけど。いつも言われた通りに「うん」って言いたくなくてごめん(笑)。35歳で新しいことやってもいいじゃん!って思ったから『新未来』がいいなって。


M-1 夜のはじまり

――― さて、1曲目の『夜のはじまり』は、時々かおりぃのライブで披露されてる『本日のうた』っぽさがありますよね。

そうなの!そもそも『夜のはじまり』は、去年の「楽園は、されど焦がれ」ツアーの東京ファイナルで1曲目に『本日のうた』として歌った曲で、その日の1番最後に『楽園は、されど』を新曲として披露しました。2曲ともライブ当日にスタジオでメンバーと一緒にアレンジしたもので。その日は開演が5分押しだったんだけど、実はそのギリギリまで私が『楽園は、されど』の歌詞を書いてたからです。ごめんなさい(笑)。

――― まさかの事態で5分押し!

おかげさまで、その日のライブで『楽園は、されど』は結構ご好評を頂いたんだけど、個人的な好みとしては、私は断然その日の『本日のうた』だった、この『夜のはじまり』の方が好きだ!!と思ってる(笑)。

――― 『ピコノート』の『oz』でも同じことを感じましたが、1曲目のイントロにワクワク感があるのは、さすがなぁ、と。これから何が起きるんだろう?何を聴かせてくれるんだろうっていうワクワク感。

それは嬉しい!ただまぁびぃが太鼓を叩いているだけなのに!

――― ただ太鼓を叩いているだけ!!(笑)あとは、新しい歌い方を覚えたという話もあったように、地声で歌いきる吉村かおりがとても新鮮で好きです。

ありがとうございます。でもこれねー、タイトルが『夜のはじまり』から『熱帯夜』で、夜の曲ばっかりだなぁって思って。これまでも『夜よ明けるな』とか『夜曲』とか、夜が付くタイトルの曲が多いから、本当は違うタイトルにしたかったんだよね。レコーディングのときもミックスのときも(仮)をずっと付けてて。……本当は「ポセイドン」か「シーザー」にしようかと思ってた。でも、結局『夜のはじまり』に落ち着きました。


M-2 熱帯夜

――― 続く『熱帯夜』は、「♪平成生まれの女の子と~」印象的な始まりで。

結局、平成生まれかどうか区別するのって昭和側の人間だよねって思うことがあって。世代の離れた人がどんどん回りに出てくるけど、話してみたら意外と仲良くできたりするし。でも、きっと私の感覚では分からない感覚をもってるんだろうなって、こっちが勝手にびびって線を引いてるところがあるかも。

――― 「ハレンチな夢」というフレーズもまた、ドキッとさせてきます。

でもさー、34とか5の女が「ハレンチな夢で目がさめて」しかも『熱帯夜』って、熟女感があって超やべーな!きもっ!って思った(笑)。でも、そのどろっとした状況もまた、30超えた今の私じゃないと書けない。

――― 熟女というにはまだ早くないですか?

そうだけど!熟女じゃないけど!なんか「うわっ」って思う状況じゃない?でもたぶん、このメロディーが助けてくれました(笑)。

――― 吉村かおりは、見た目もキャラクター的にも、それこそ声質や音楽的にも「え、かおりぃってもう35歳なの?!」って思われることが多いだろうし、そんなにエグい伝わり方はしないと思いますけどね?

そうだといいけど!聴いてる人の耳汚し目汚しにならなかったらいいな。でも、最悪もし誰かに何か言われても「この歌詞は別に私のことじゃないんで!」って言う(笑)。吉村かおりの曲は大抵フィクション、作り話だから。


M-3 待ち合わせ(ガール)

――― レコーディング中に、仮タイトルで「うーあちゃん」という曲があるのをブログに載せていましたよね。

そうそう、「うーあちゃん」!『待ち合わせ(ガール)』のことですね。あれは、UAのこの曲っぽいリズムでやりたいんだーっていうイメージがあって。でも、合わせてみたら全然違う方向に仕上がりました。

――― 何故、タイトルにカッコが付いているのでしょう?

ただの『待ち合わせ』にしたくなかったんだよね。昔、『待ちぼうけ』っていう曲を書いたことがあって、なんか似てるから悔しくて。「うーあちゃん」の次の仮タイトルが「ガール」だったんだけど、『熱帯夜』にも女の子は出てくるし、この曲も別にガールは出てこないし……。で、悩んでるときに『新未来』の曲を並べてみたら、今回は珍しくカタカナのタイトルの曲がないことに気付いて。

――― カタカナのタイトルがないのは珍しいですね!アルバム名も漢字ですし。

そうでしょ?今まで絶対カタカナの単語が入ってたんだよね。なんとなく字面を見ても、視覚的にカタカナがないのは寂しいし、漢字ばっかりでも堅苦しいなって思って。誰にも求められてないけど、カタカナを入れたい気持ちがあったので、『待ち合わせ(ガール)』です!!

――― そして、この曲もまた、短い歌詞の中に気になるフレーズがいくつもありますね。

「泪と瞳が落ちた」のところも本当は「泪と目玉」にしようと思ったんだけど、聴いてる人が嫌かな?と思って変えました。音的に、アルバムの中で1番平和でポッピーなので、エグいというか黒いことを言いやすかったかも。

――― 音の面では、パーカッションもいい味出してますよね。

パーカッションは、どの楽器を使ってほしいとかも頼んでなくて、全部まぁびぃ任せでした。レコーディングの時も「へー、トライアングル使うんだー!」とか「あー、その洗濯板みたいなやつ見たことあるー!」って、楽しんでました。

――― つぼのギターはもちろん、それぞれ楽器隊のセンスが光る楽曲にもなってますよね。


M-4 白い岸

――― どう解釈しましょうかね?と悩んだのですが。

えー、聞きたーい!(笑)

――― それをかおりちゃんに聞くためのインタビューなんですが……

ちなみにマリエちゃんはどう解釈したんですか?

――― 強い単語もあるので、ちょっと宗教的な側面を含んでいるのかな?と思ったんですよね。分かりやすく言えば、アダムとイヴだったり、イエスとマリアだったり。……けど、その顔を見る限り違うようですね(笑)。

ふふっ。でも、そういう色んな解釈が聞けるのは面白いなぁ。私の中で前半は、松本清張の小説のイメージで、だから歌詞に出てくる「彼」とは松本清張のことですね(笑)。若いのに不幸な人が出てくる作品のイメージ。あとは香港に行く飛行機の中で書いたんだけど、あっちは大きな川があって、空から見るとだいたいまわりも海だし、という風景で、そこから“岸”のイメージがあるのかもな。書き出してみたら、清張的な日本海の荒ぶった岸、のイメージもダブって出てきましたが。とりあえず私の中では、短い歌詞の割に映像が浮かぶかも。

――― そして、イントロのピアノが、耳に残るのに明るすぎない、絶妙なフレーズです。

明るすぎないけど、抜けるところもあるよね!あのフレーズはね、本当はバラしたくないんだけど(笑)、松本清張の作品が映画になった時に西島秀俊さんが出てて、そこからの記憶で、西島さんがなにかに気づいて振り返る瞬間、1音ごとにカットが切り替わって、最後にカラスみたいな黒い鳥の群れがウワーって飛んでく……っていう勝手に想像した映像、を“音”化したものです。西島ピアノ、西島コード(笑)。サスペンスの予告編によくありそうな映像のイメージ。

――― かおりぃにしては珍しいフレーズというか、珍しい進行ですよね。

曲頭や終わりのよく分かんないコード進行は、本人には「やらんわ!」って突っ込まれると思うけど、こまっちゃん(小松原沙織氏)がやってそうなことを弾いてみたかったの(笑)。ルートしか分かんないけど、こまっちゃんみたいなアカデミックな音を弾いてみたかった!!


M-5 無題

この曲は、名古屋の鑪ら場にソロでライブに行った時に、移動中のバスの車内で書いて、その夜にそのまま名無しの新曲として発表したの。で、最終的に『無題』にしたのは、このタイトルが良かったんじゃなくて、絶対に「愛とは」ってタイトルにしたくなかったから!

――― 歌詞の中にも、ひらがなの「あい」と漢字の「愛」がありますしね。

曲頭から漢字だとちょっと強いなって思って。でも全部ひらがなにしてみたら、ちょっと間抜けだなって(笑)。

――― 自分でアートワークまでやっているからか、作詞をしながら歌詞カードのレイアウトも考えているような、視覚的に歌詞を組み立てていくことも多いよね。パッと見たときに目に入ってくる改行の位置とか、見た目の文字数なんかも気にするでしょ?

気にするねー!空白、スペースとかもすごい気にする!どこで区切るか、とか。たぶんそれは昔、自分がCDを買って歌詞を読みながら聞くときに、歌詞カードの文字の区切り方の印象だけで曲の印象が変わるっていう経験があって。だから、言葉の並びはすごく気にしてますね。漢字の変換で悩んだりもします。

――― あ、これもまた夜の曲ですね。

実際にパリとかロンドンって言ってるけど、ヨーロッパの夜っぽい感じですね。なんでこんなに夜の曲が多いんだろう?って考えたんだけど、やっぱり夜にライブで歌うことが多いからじゃないかな?

――― 夜に曲を書いている、とかではなくて?

曲は、朝起きたときにふとんで作ったりしてて、夜しか書かないってことは全然ないんだよね。そもそも妄想型だから、何時でもどこにいても関係ない。

――― なるほど。さて、この曲はエレキギターと歌のみ、という編成です。

ほとんどピアノ弾き語りの雰囲気のままで、ギターの音色とかはつぼに任せました。私はこれまでアレンジの元ネタとかを言いたくなかったし、そもそもあんまり無かったんだけど、坪光さんが「寄せるのも大事だよ」って。

――― 過去に売れたものや、今売れているものに寄せる、似せてみる大切さもあると。

私は、もう誰かがやってるなら意味ないじゃん!って思ってたけど、私たちはあまりにそこで衝突してきたので(笑)「じゃー坪光さんがそんなに言うならやってやるよ!」ってなって。だから、自分の中では新境地です。このアレンジは、去年の春にキャンプフェスに行って、昔好きだったACOのライブを見たことに影響されてます。

――― ACOさんは、Dragon Ashの『Grateful Days』にゲストボーカルとして参加されていた方ですね。まさに90年代に活躍していた方。

そうそう!フェスのときは、エレキギターの弾き語りにエレキサポートを入れてたんだよね。綺麗に歳をとって、ビール呑みながらライブしてて。そんなにギターとか得意じゃないんだろうなぁ……っていう、ぬるーい緩い感じの気だるいエレキギターが、むしろ超カッコ良くて。坪光さんも一緒にそのライブを見ていたので、この曲に関しては「ACOの、あのエレキギターデュオのイメージね!」って言って、あの気だるさに寄せました。

――― そんなに具体的な参考例があったとは思いませんでした。そして、吉村かおりと言えば、滑舌の緩さも持ち味ですが……

持ち味って言ってくれるんだ!!!(笑)

――― 私はそう思ってますよ!(笑)その緩い滑舌が、この気だるいサウンドとちょうどよく合わさりましたよね。


M-6 あれに見えるは桜でしょう

――― 『ピコノート』の高橋コースケ氏(from JAWEYE)のアレンジによる『あざやか世界』で「吉村かおりの楽曲と打ち込みサウンドは合うんだ!」という発見があった人には、またこういったアレンジが入ってくるのは嬉しいのではないでしょうか。しかも今回は、アレンジャーに当て書きしたという。

この曲はやっぱり、オファーを出す前から、つるうちはなによるアレンジを想定して書いた!っていう印象が強い。浮かんだのは、めっちゃ寒い日の夕方にベランダで洗濯してるときだったんだけどね。「♪あれに見えるは桜でしょう~」っていうサビのフレーズがどうにも「これは私の好きなCHARAとかYUKIの、四つ打ちの打ち込み系のやつだ!」ってなって「それなら、つるうちはなだ!」って思ったから。

――― つるうちはなも感じればサトウトモミも感じるし、でもきちんと吉村かおりに仕上がっていて、3人ともさすがだなぁ、と。あとは、変な言葉だけど、メジャー感がありますよね。タイアップが取れそうな感じ。

そう!春の口紅の新色が出たあたりにCMとかで流れてほしいイメージ!(笑)誰にも頼まれてないし、歌ってくれないだろうけど、もし誰かに曲を提供するとして「シングルで出したいので書いてください」って言われたら、こういう曲になると思う。変にはみ出さないように、アンバランスにならないようにしました。はなちゃんにアレンジをお願いしたときも「ちょっとダサいJ-POPのイメージです!」って伝えてあって、参考に岡村ちゃん(岡村靖幸氏)の曲を挙げてみたり。

――― キモカッコ良いですからね、岡村ちゃんは。

そうそう!歌詞に関しても、気持ち悪いというかキモ可愛い「いつまで女の子してるの?!」みたいな、夢見がちな感じの……30歳になっても40歳になっても恋してる女の子をイメージしていて、歌詞は1番難しかったですね。だって気持ち悪いよね、この女!(笑)

――― 友達にはなりたくないですね(笑)。

どうしよう、歌っていかなきゃいけないのに(笑)。でも、ライブアレンジもして歌いたいなー!


M-7 暮らし

――― すごく好きです。

面白い統計なんだけど、人妻ほど好きだって言う(笑)。みかちゃん(新澤美佳氏fromスモークポーク)とか紗江ちゃん(菅田紗江氏)も好きだって言ってた。別につぼや自分のことじゃないし、ノロケの歌のつもりもないから、坪光さんの顔が浮かんじゃったら申し訳ないですが。それぞれ自分のこととして聴いてもらえたら、と思います。

――― 家族しかり恋人しかり、特定の相手がいる人は「君」を当てはめて聴くことになると思いますよ。それにしても『暮らし』ってすごいタイトルですよね。

ね、すごいよね!(笑)悩んだけど、暮らしてることを歌っているしなぁ……って『暮らし』になりました。

――― 『きみのあした』や『そらゆけソレイユ』でも歌ってきた吉村かおりの死生観が、この曲でさらに日常に寄ってきましたね。

あー、確かに。去年、真昼の月 夜の太陽の6周年イベントに出たときに「6周年おめでとうございます!これからも続くように願って歌います!」って言ってから、たまたまこの曲を歌ったんだけど、その時に「あ、そういう、なにかが続いていく曲でもあるんだな」って気付きました。あと、言葉が悪いけど、最悪、結婚式で呼ばれても歌えるかもしれない曲ですね(笑)。

――― レコーディングはフルメンバーで。あ、でもオルガンはつぼなんですね。鍵盤モノはかおりぃかと思ったら。

ベースが渉くんで、ギターは匡くんで。オルガンは、つぼの方が仕事が速いから入れてもらいました(笑)。この曲、つぼが好きな曲なので、かなり彼の提案した音像に任せてます。ギターのディレクションも。

――― 坪光さんがどんな楽器もできるプレイヤーというのは、吉村かおりの制作にかなり影響を与えているのでは?

それは絶対ありますね。たぶん、つぼと衝突したから生まれたアレンジもあると思います。あ、この曲は「ビートルズサウンドにしたい」って言ってましたね。

――― ギターも2人体制ですし、どこか懐かしいサウンドに感じていたのには、つぼの意図もあったのですね。


M-8 balloon

――― 吉村かおりとしては新しいよね。

音は古いけど。

――― そう、まさに90年代で、オザケン(小沢健二氏)の香りがします。

本当に90年代!「♪今夜はアンモナイト~」が『今夜はブギーバック』みたいなね。この曲は、まぁびぃとリハに入ったときに私が「まだ何曲か作らないと足りない!」って言ってて、休憩中にセッションみたいなことをしていたらサビができました。後で聞き返したときに、エレピで打ち込みっぽくて、ちょっとメロウな雰囲気のサウンドがいいなぁと思ってたら、つぼもめっちゃ乗り気になって、その場でイメージを固めてくれました。

――― つぼはヒップホップアイドルの皆さんに曲提供していたりもするので、打ち込みのアレンジも手慣れたもので。繰り返される歌詞もそうだし、それこそ途中でラップが入ってきてもおかしくないテイストの仕上がりですね。

そう!でも、90年代当時はリアルタイムじゃ全然聞かなかったジャンルで、もっとガツガツのギターバンドとかが好きな中学生だったし、正直、そういった方面の方々のスカして見えた感じが好きじゃなかった(笑)。HIPHOPとかラップの人の服装とかも怖かったし、実は20代半ばぐらいまでよく分かんなかったんだけど、今はこういうゆったりな曲もいいよねーって思うようになった。

――― ちょっと薄暗いクラブで、お酒を呑んで揺れながら聴くっていうね。

そうそう。ちょうど私は10代で、そんなに悪いことする勇気もなくて、悪い子に憧れてた良い子だったので「クラブってなんですか!?連れてってください!」みたいな(笑)。でも、大人として今、あの時代をもう1回経験できたら面白いなって。今聴いて、あえて懐かしい感じがするのもいい。でも時代越えても揺るがない、刻んでおきたいカルチャー感だと思う。


M-9 袋小路

これはバラードですね。

――― でも、Aメロ・Bメロ・サビときて、大サビです!っていう壮大なバラードではなく。

バラードが長いのって嫌なんだよね。飽きちゃう。長いとその間に冷めちゃうから、サクッとしたバラードの方が好きです。

――― 挑戦という意味でタッグを組んだ、ガットギター敢君のアレンジはいかがでしたか?

さわの現場で先に彼を知っていたまぁびぃとつぼが「アイツは超変えてくる(アレンジしてくる)よ!」って言ってたから、まだ私もイメージが固まってない作ったばっかりの曲で、ガットギターが合いそうな曲を、あえてそんな彼に出してみたの。で、私は変えてくれって一言も言ってないけど、返ってきたときに「すいません……あんま変わってないけど」って言われて。でも、その割にコードの切り替え方とかが変わってて「超ひねくれてるなコイツ!」って思った(笑)。

――― ひねくれ方でいったら、タイトルに『袋小路』という言葉をもってくる吉村かおりもなかなか……

これも本当は別のタイトルにしようと思ったんだよね。だって『袋小路』ってタイトルを言われても、なんの歌か分からないじゃん?私が言うのは今さら感がありますが(笑)。大体タイトルが付けられないときは、歌い出しの歌詞がそのまま使われることが多いので、今回もそのパターンですね。

――― 「袋小路の 夢ばかり」、実際に見ていたわけではないですよね。

うん。これは、寝てるときに見る夢って思うけど、実は望むほうの夢でもいいのかもなーって。例えばひとつの解釈として、物事は始まりから終わりがあるのに、ぐるぐる夢ばっかり見てるんじゃないよ!って怒ってる風にもとらえられるかな。でも、これはなぜ作ったのかというと、Aメロが歌いたかっただけですね。

――― まさかの!(笑)

Aメロの「♪きみ~」が言いたかっただけで、後半は取ってつけたというか、調達してきた感じです。あとは自分のおばあちゃんのイメージですね。カステラって単語のイメージだけだけど。でも、おばあちゃんから実際によくもらってたのは、キャラメルです(笑)。


M-10 楽園は、されど

――― 昨年の「楽園は、されど焦がれ」ツアーを経て、東京ファイナルの開演ギリギリに仕上がったという曲。

やっぱり旅感があるよね。平井ミエとさわひろ子と、さわのサポートのサム(敢君)と、つぼまぁびぃで6人のツアーだったんだけど、それぞれが個人を尊重しつつ協調性もありつつ、無邪気な大人の友達っていう感じが良かった。

――― そう言えば、曲タイトルの一部でもある「楽園は、されど焦がれ」のツアータイトルは、かおりぃ発案なの?

それがですね……あのタイトルは、3組で1つずつ言葉をせーの!で出し合って、くっ付けて決めたんです。正確に言えば、平井ミエはその場にいなかったから代役の人が書いて。さわが「楽園は」で、平井ミエの代役が「されど」、私はもつ焼き屋の店先にいたから「焼かれ」だった(笑)。それで「楽園は、されど焼かれ」になったんだけど、翌日にさわから「やっぱり、焼かれは言葉が強いんじゃないですかね……?焦がれとか……どうですかね?!」って連絡がきて、最終的に「楽園は、されど焦がれ」になったっていう。私はいっこも直接的には書いてないから『楽園は、されど』って言葉に関しては、パクリですね!(笑)

――― 認めましたね(笑)。

でも、せめて……と思って、漢字は違うけど歌詞に「妬かれ」を入れました。あと、名古屋のライブでさわが話したエピソードがあって。道中、私は寝てたんだけど、車でトンネルの多い高速を走ってるときに、トンネルが来るたびにみんなで息を止めようっていうゲームをしてたらしく(笑)、すごい一体感が生まれてたらしいんだけど。さわが「長いトンネルになると、運転してるつぼが苦しくなって、ちょっとアクセルを強く踏むのが怖かった」って言ってて……

――― 馬には呼吸を止めさせないで!?

あのツアー楽しかったなぁっていう思い出を、歌詞に詰めました(笑)。「工業湾岸地帯」は、新東名を通ったから。やっぱり、旅感がある曲です。

――― サウンド面では、一緒に旅をしてきたつぼのギターがエモすぎるぐらいにエモくて、素晴らしいですね。

この曲も「暮らし」と同じように彼が特に好きな曲らしく、本人からの申し出でアウトロのギターのミックス加減にもすごくこだわってました。渉君のベースもまた良いんですよ。


――― 以上、全10曲。トータルタイムも40分台と、軽やかさのあるアルバムです。

短い曲が多いよね。手を抜いてるつもりはないけど、曲を作ることに関してイキミがなくなって、作り手として曲の隣にそっと寄り添うぐらいの感覚になったかな。重々しかったり、長くなくたっていいじゃん、概念にこだわらなくたっていいんじゃない?っていう考えが年々強くなってるところは逆に大人になってないと思うし、むしろ尖っていってる感じがしますね。だから、潔い構成の曲も多くなりました。

――― 個人的には、リリースの前に「恥ずかしくもJ-POPに仕上がりました」みたいな文章をどこかにUPしていたのが印象に残っていて。かおりぃだけじゃなくて、インディーズで音楽をやっている人は、「J-POP」という言葉の響きをあまり良い意味でとらえていないというか。J-POPというものを、ちょっと馬鹿にしてしまうような風潮って、あるじゃないですか。

うんうん。

――― でも、我々が聴いて育ってきたのは紛れもなくJ-POPだし、やっぱり上質な、良質なJ-POPって素晴らしいものだと思うんですよ。

これまでずっと「かおりぃはポップだね!」って言われたり、ポップスの安易な範疇から出れないことがすごく嫌だったんだよね。嫌というか、「私はパンクなんで!」とか「ロックなんで!」って言える方が甘っちょろくない感じでカッコ良いと思ってた。でも、ロックもパンクも結局ポップスに含まれてるんじゃないかって気付いて、別にポップでいいじゃんって。日本人として日本に生まれて、日本の現代文化をごく自然に吸収させられて、だからもう認めざるを得ないよね、J-POPであることを。

――― 『新未来』はとても素晴らしいJ-POP作品です。

ありがとうございます。

――― 純粋に売れてほしいと思いました。セールスとして結果も出してほしい。

頑張ります。でも、CDを作るのに必死でツアーを組み忘れちゃったので(笑)、地方は春あたりから回ろうかなぁ、と。あと、お金とかじゃなくて、今回は私が絶対に一緒にやりたくて頼み込んだ方々が、本当にお忙しい中で関わってくださったので、その人たちの音も少しでも多くの人に聴いてほしいなって思います。

――― ひとまずは、誕生日にレコ発ワンマン。これは初めてですよね?

誕生日のワンマンって、情だけでどれぐらい人が来てくれるのかな?って1回だけやってみたくなっちゃったんだよね。や、"きっかけ"だけですけどね、軽いノリで決めたのは(笑)。でも、経験できないけど、自分のお葬式のときに何人来てくれるだろう?みたいな感じ。

――― 誕生日でレコ発って、お葬式よりだいぶおめでたいイベントだけどね(笑)。

そうだね(笑)。来て下さる方はあんまり誕生日っていう意識はないだろうけど。あとは、自分の父親が68歳で亡くなったので、まぁ人生を70年生きたとして、35歳でちょうど半分だから、1回ぐらいやってみようかって思った。この先、50歳でバースデーワンマンとかリリースワンマンとかは、その時に出来る状態かも分からないし、とりあえず35歳でやっておこうかなって。でも、来年も誕生日ワンマンしちゃうかもしれないし、分かんない!

――― その時は、また新しいCDを作ってるのかな?

『新・新未来』!(笑)いやー、『新未来』って超良いアルバムタイトルだと思ってます!


<インタビュー:ムラタマリエ>


ムラタマリエ:
元シンガーソングライター。現在はムラタトモヒロのヨメをしつつ、ライブイベントを企画したり、インタビュー&ライターをしたり、都内のコミュニティラジオ局でディレクターをしたり、諸々。紅茶が好き。甘党。
「ヨメノブログ」http://ameblo.jp/yome-no-blog/



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吉村かおり

シンガーソングライター。
だいたい鍵盤弾語り、たまに3ピースバンド。
東京都内を中心に活動するひねくれ歌うたい。

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また、お気楽ユニット
モニカアンドメアリー」(通称:モニメリ)
としても地味に活動中。

ブログURLは米好きに由来。
 
 
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Discography
 
ふくろのそこJKT

吉村かおり [ふくろのそこ]
2014.11.16 release
6tunes ¥1500
>>試聴(SoundCloud)